これから警備員に応募する人が知っておきたい事
求職サイトで検索すると高確率でヒットするのが警備員の仕事です。
どこの広告を見ても日勤1万円越えばかり。交通費全額支給、社会保険制度あり、さらに寮完備なら文句無しの好条件。
近所で見掛ける警備員さんはほとんど動いてる様子がなく、これなら自分にも出来るんじゃないかと応募する人も多いようです。
でも、ちょっと待ってください。
僕は7年ほど警備業を経験してますが、辞めて行く仲間は後を絶ちませんでした。
それも入りたての新人さんが多いです。
好条件のはずなのに、その方たちは何故辞めてしまったのでしょうか?
いいえ、そういう事ではありません。
実際に体力に自信のないお年の方でも長く警備員を続けられています。
これから警備員として働こうと思っている方に、知らないと損する事をご紹介させて頂きます。
【もくじ】
1.警備員への道
はじめに、
警備員の仕事は採用後すぐに働ける訳ではありません。
警備員として必要な教育を受けてから、実際に現場に出るようになります。
そもそも警備員とは
警備業務は1号業務・2号業務・3号業務・4号業務に区分されています。
それぞれ教育内容も業務内容も違うので、応募しようとしている警備会社がどの区分で広告出しているのかちゃんと確認するようにしましょう。
【警備の区分】
・1号業務(施設警備業務・巡回警備業務・保安警備業務・空港保安警備業務・機械警備業務)
事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等の施設における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務。・2号業務(雑踏警備業務・交通誘導警備業務)
人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務。・3号業務(貴重品運搬警備業務・核燃料物質等危険物運搬警備業務)
運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務・ 4号業務(身辺警備)
人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務
ほとんどの求人広告は1号業務と2号業務です。
今回は求人率の多い2号業務をメインにお話させて頂きます。
1-1.面接、欠格事由の確認
警備員は正直言うと誰でもなれる訳ではありません。
面接時の態度とかそういう事では無く、警備業法という法律で警備会社に欠格事由の確認をするように規定しています。
欠格事由とは『これに該当する人は警備員にはなれませんよ』というものです。
警備業法には警備員の制限としてこう書かれています。
(警備員の制限)
警備業法第十四条
十八歳未満の者又は第三条第一号から第七号までのいずれかに該当する者は、警備員となつてはならない。
2 警備業者は、前項に規定する者を警備業務に従事させてはならない。
(警備業の要件)
警備業法第三条
次の各号のいずれかに該当する者は、警備業を営んではならない。
一 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して五年を経過しない者
三 最近五年間に、この法律の規定、この法律に基づく命令の規定若しくは処分に違反し、又は警備業務に関し他の法令の規定に違反する重大な不正行為で国家公安委員会規則で定めるものをした者
四 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者。
五 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定による命令又は指示を受けた者であつて、当該命令又は指示を受けた日から起算して三年を経過しない者
六 アルコール、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤の中毒者
七 心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定める者
以上のように警備業法は、警備員と警備業者(会社)の双方にこれを守ってくださいねと言っています。
つまり、
・18歳以上
・自己破産してなくて自分でお金の管理が出来る人
・犯罪を犯した人の場合、刑を終えてから5年経過してる人
・過去5年間に警備業法を違反したことない人
・お酒や違法薬物の中毒者じゃない人
・心身の障害があっても適切な判断が出来る人(ノイローゼや鬱でも診断書があればなれる)
これが絶対条件になります。
これは警備業法という法律で定められているので権力があり、省くことは出来ません。
その為、面接時と面接後にこの確認が徹底されます。
もちろん、面接中に全てを確認する事は出来ないので、話した印象や免許証等で年齢の確認、欠格事由に該当していない事の誓約書にサインしてもらうなどして、ある程度で面接を終わらせます。
その後、警備会社によっては親族等の身近な人に欠格事由に該当してないか確認の電話を入れます。
「大麻とかやってないですよね?」「暴力団と関わりないですよね?」「精神を患ってないですか?」とか、
大変失礼な話になってしまうので会社側も申し訳なさそうに訊ねます。
僕が警備員になった時は、面接終えた当日の夕方頃に電話が掛かって来て、父が対応してくれました。
こういうのが苦手な人だけど、終えた後に「しっかりした会社だな」と言ってました。
こんな風に捉えてくれると会社側もありがたいですね。
その他にも、住民票や身分証明書、ない事証明書を採用後に提出する必要がありますが、
これは会社の方で取り寄せてくれる事がほとんどなので、必要な時だけ自分で取りに行きましょう。
面接時にしっかりと受け答えをする事、欠格事由に該当していない事、以上の事を満たせば面接を落ちることはほとんどありません。
1-2.新任教育
採用が決まったらまず行われるのが新しく警備員になる隊員の教育です。
教育は、基本教育15時間、業務別教育15時間の合計30時間を数日に分けて行われます。
特例で時間を免除される事もありますが、これは三年以内に一年間経験のある人や当該警備業務の資格を持っている方が対象なので未経験の人には関係ありません。
教育も警備業法で定められている事なので必ず参加しなければなりません。
(警備業者等の責務)
第二十一条
警備業者及び警備員は、警備業務を適正に行うようにするため、警備業務に関する知識及び能力の向上に努めなければならない。
2 警備業者は、その警備員に対し、警備業務を適正に実施させるため、この章の規定によるほか、内閣府令で定めるところにより教育を行うとともに、必要な指導及び監督をしなければならない。警備業法施行規則
(教育)
第三十八条
法第二十一条第二項 の規定による警備員に対する教育(以下「警備員教育」という。)は、基本教育、業務別教育並びに必要に応じて行う警備業務に関する知識及び技能の向上のための教育とする。
教育は室内や屋外、現場などで行われます。(警備会社によっては室内のみで済ませる場合もあります)
警備員としての礼儀や作法、警備業法や関係法令について学び、旗や誘導灯を使った実技訓練などを行います。
どれも現場で必要となる事なので、しっかり学んでください。
ここで居眠りをしていると、実際に現場に出た時にまったくついていけなくなります。
短い期間ですが、この経験がご自身にとって、とても優位に働くのです。
1-3.現場勤務
教育が終わると、実際に現場に出るようになります。
そこは道路だったり建築だったりと現場によって様々ですが、プロの警備員として意識を持つようにしましょう。
挨拶は絶対大事
ここでまず大事なのは、挨拶をきちんとする事です。
一緒に働く仲間や監督や作業員、顔を合わせた人に片っ端から挨拶して回りましょう。
なんだそんな事か思われるかもしれませんが、挨拶にはやる気が宿っています。仕事を始める前に行う事で緊張を和らげ、気持ちに余裕が生まれるのです。これは習慣にして欲しいです。
学ぶ意識を持つ
最初は何をしたら良いか戸惑うばかりだと思いますが、一緒に働く隊長や仲間に教えて貰いながらやれば徐々に慣れて行くと思います。
現場では教育以上に学ぶ事がたくさんありますので、分からない事は自分からどんどん聞くようにしてください。
早く仕事を覚えれば、その分仕事が楽になります。
遅刻は絶対に厳禁
教育期間中にも口をすっぱくして言われるかも知れませんが、警備の仕事で遅刻はご法度です。
警備員が来てないと作業を進められない現場が多く、みんなに迷惑を掛けてしまいます。
仲間や会社からの信用を失ってしまうので絶対にしないようにしましょう。
2.新人隊員が悩む事と解決法
さて、本題です。
警備員になったは良いけど、しばらくするとそこで辞めてしまう人がいます。
欠格事由をパスして、教育もまじめに受けて、実際に現場で稼げるようになったのに、実に勿体無いです。
中には就職先が決まったとか明るい理由もあるのですが、大半が何か問題を抱えていたりします。
それでは一体何が問題なのでしょうか?
解決方法と合わせてご覧ください。
2-1現場が遠い
警備会社の扱う現場は必ずしも近い場所ばかりではありません。
各地で工事をやっているのだから当然なのですが、自転車で行ける現場もあれば、電車で一時間以上掛けて行く現場もあります。
新人の内から遠い現場ばかりに通わされていれば、それは辞めたくなりますね。
しかし、会社側も交通費の観点から考えると近くの現場に隊員を手配した方が負担額が減り利益になります。
そこから考えるに、決して遠い現場を振りたくて振っている訳ではない事が分かります。
では、何故遠い現場ばかりになってしまうかと言うと、それは新人に適している現場が近くにないからです。
近くに現場があったとしても、そこが引っ切り無しに車両を誘導するような場所だと新人にとって難しいです。
それこそ、事故を起こしたり、辛い想いをしかねません。
僕が入りたての頃は、片道1時間くらいする現場で毎日3時間残業をする監視業務をやってました。
当時は金銭的にかなり困っていたので残業は苦にならなかったし、やる内容も歩行者が転ばないように見守るだけの仕事だったので新人の僕にも出来る仕事でした。
このように、会社側は隊員のスキルを考慮して手配しています。
遠いからと言ってそこでめげず、自分に合った現場なのかを考えてみてください。
自分に合っていたら、会社がちゃんと考えてくれている証拠です。
2-2現場がきつい
新人隊員は基本的に教育で学んだ範囲内で過度にスキルを求められる事はありません。
先述した通り、会社側も隊員のスキルを考慮した上で手配しています。
ただし、それでもきついと思う事があるかも知れません。
現場によってはA型バリケードやウエイト(重り)を運んで規制を張るような仕事もあり、慣れるのが大変です。
他にも、精神的にきつくなる事が考えられます。
迂回誘導などは特にそうで、普段通れた道が封鎖されていて遠回りさせられた歩行者や車両の運転手から文句を言われる事があります。
歩行者たちの気持ちも分かりますが、新人隊員にとってはこれはすごい辛く、気持ちをうまく切り替える事が出来ません。
会社側は現場の状況を全て把握している訳ではないので、問題がないと感じれば慣れてる同じ現場に行って貰おうと考えてしまいます。
これが、新人隊員を追い込む事になってしまいます。
しかし、悩む必要はありません。
そういう時は会社側とすれ違いが起きている状態なので、遠慮なく相談するようにしましょう。
体力面や精神面で、自分にこの現場が合わないと思ったら、現場を変えて貰えば良いだけです。
新人隊員の頃は自分で消化出来ない事がたくさんあると思います。
遠慮なく現場の隊長や仲間に相談したり、会社側に現場の希望を伝えたりして解消するようにしましょう。
2-3.人間関係が上手くいかない
一緒に働いている仲間や現場の作業員さんとなんだか反りが合わない。怒られる事が多くて嫌になる。
そう感じる事も新人の内にはあると思います。
しかしそう感じた時は、一度思い返して見ましょう。
警備員という仕事は知恵を働かせ、危険があれば未然に防いだり回避しなければいけません。
現場では重機が動いたり、車両が出入りしたり、危険な事がたくさん有ります。
怒られた時に危険な事は有りませんでしたか?
もし心当たりがあるならば、周りは心配で言ってくれているんです。
忠告として素直に受け取っておきましょう。
それでも、どうしても一緒に働くのが嫌だと言うなら、会社に相談してください。
パワハラやセクハラを問題視している会社はたくさんあります。
実は僕も隊員だった時、パワハラ気味に怒鳴る苦手な人がいて、会社に一緒の現場に入れないようお願いした事があります。
ただの一回でしたが僕はこれで続ける事が出来ました。
2-4.思ったより稼げない
外勤である警備員は作業によっては雨で中止になる事があります。
道路上で舗装を剥がして土を掘って作業する道路工事や土木作業は特に弱く、雨の日には中止になり易いです。
その為、常駐していると現場合わせとなり休む事になってしまうので、思うように稼げなくなってしまいます。
梅雨に入ると「このままじゃ生活出来ない」と嘆いて辞めていった仲間は何人もいます。
こればかりは会社側もどうする事も出来ないので、ひたすら謝るしかありません。
それでは、どうすれば良いのか?
解決法と言えるか分かりませんが、
僕が当時仲間から聞いたやり過ごし方をお教えします。
「梅雨に備えてひたすら稼ぐ」
6月入る前に連勤(昼と夜に勤務する)を繰り返して、とにかく貯金しておく方法です。
普段は休むと決めている曜日(土日とか)にも仕事を入れておくのも手です。
「その時期に短期のバイトをしてる」
警備員はアルバイト扱いなので、ダブルワークがいくらでも許されます。
その時期に警備の仕事をお休みして、梅雨が明けたら復帰するのも有りだと思います。
「有休を取る」
警備会社にも、もちろん有休制度があります。
しかし、有休は働き始めてから6ヶ月継続して働き、8割の日数を満たさないと発生しません。
働き初めには向かない方法ですが今後の為に覚えておくと良いと思います。
「FXで儲けてるからあまり気にならない」
強者です。
その人はその後、投資の世界に消えて行きました。
以上、参考になりましたでしょうか?
僕は、経験上建築現場の常駐になるのがベストだと思います。
雨で中止になる事が少ないので、年末年始には巡回の仕事もあるので安定します。
しかし、ほとんど少人数で行っている所ばかりなので、枠が空くかは分からないし、単独で対応するスキルも求められます。
3.ライフスタイルに合わせる
交通誘導警備員の仕事は他の業種と比べても自由度の高い仕事と言えます。
稼ぎたい時はがっつり働いて、プライベートを優先させたい時は程々に働く、ご自身の都合に合わせる事が出来ます。
お給料も日払い、週払い、月払いと選べる会社が多いので、経済状況に合わせて収入を得る事が出来ます。
後は会社側と現場の相談をすれば、自分好みの環境になるはずです。
しかし、「早く終わる現場が良い」とか「近い現場しか行かない」とわがままばかりになってしまうと入れる現場がなくなってしまいますので注意してください。
会社側との良好な関係を築くのも大事です。
雇用保険についての注意
雇用保険の加入条件は31日以上働く見込みがあり、一週間あたりの所定労働時間が20時間以上である事が必要です。
警備員みたいな不定期な労働の場合、会社ですぐに加入させる事が出来ないので、
上記の条件を満たすならご自身から会社に雇用保険に加入してもらうように申告しましょう。
放っておくと条件を満たしていても一向に加入出来ません。
僕も7年働いていたにも関わらず、加入していた期間は後半の4年ほどでした。
気付くのが遅かったです。辞めた後、相当損をする事になりました。
将来的な事を考えて、申告は早めに行いましょう。
まとめ
・条件を満たせば面接は簡単に受かる。
・教育期間中は真面目に受けること。
・現場に着いたら挨拶をきちんとすること。
・働きづらいと感じたら会社に相談すること。
・梅雨時には気を付ける。
・ライフスタイルに合わせる。
・雇用保険の加入はお早めに。
以上、いかがでしたでしょうか?
警備員の仕事をご検討中の方、少しは参考になりましたか?
僕が新人の頃、最初に常駐になった現場の仕事は仮設歩道橋の監視員でした。
小学校が近くにあって、そこの児童が頻繁に利用するので、転んだりしないように見守る仕事です。
仕事中にも関わらず、僕は児童とジャンケンしたり、手品を見せたりして遊んでました。
監督からは子供と良好な関係を築くように言われていたので、これも仕事です。(笑)
3か月ほど経つと新しい歩道橋が完成して、仮設歩道橋が撤去され、僕の仕事は終わりました。
最後に児童たちから手紙とか折り紙とかなんかの部品みたいな良く分からないものを貰って、
「今までありがとう」と言ってくれました。
これが僕が警備員を続けられた理由だったと今でも思います。
これから働く皆さんも良い現場に巡り合えると良いですね。
余談ですが
数日後、雑工事でまた同じ現場に行ったら、「まだいたの?」と言われました。(笑)
引用元
一般社団法人 全国警備業協会
警備業法の解説【11訂12版】